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ヘラシギ 箆鷸

英名 Spoon-billed sandpiper

学名 Eurynorhynchus pygmeus

チドリ目 シギ科

撮影:海老江海岸

全長15cm 旅鳥 一見トウネンに似ているが、嘴がヘラのようになっている。数がとても少なく世界で4000羽とも言われ、日本海側のほうが見つかりやすいとも言われている。トウネンの中に混じっていることが多い。この個体は夏羽が残っており十分楽しませてくれた。

難易度:高

2005年9月17日新規掲載

ヘラシギ夏羽観察 2005年9月15日観察

滞在はこの日だけだったようです。その後 足輪を付けた方とのやり取りをプライバシーに配慮した仕方で掲載します。

3. 投稿者:H氏 投稿日:05/09/18(Sun) 22:12

ヘラシギ個体の観察、ありがとうございます。
写真右足の薄緑色のプラスチック板は、1970年代以降急速に減っているヘラシギ保護のため、渡りの経路、生態を知るために、ロシアを中心とした私たちの国際調査団が繁殖地でつけた薄緑色のフラッグです。
この個体は右足にフラッグをつけているので、2003または4年に雛だった個体で、ロシア極東チュコト自治区南部マイナピルギナでマーキングしました。したがって、年令は3年目または2年目に入ったということになります。
マーキング個体の観察は調査開始の2000年以降5例目、日本では3例目です。その意味でとても貴重なデータですが、同時にこれまで秋の渡りに日本で成鳥が観察されたことは、あまりなかったようで、その意味でもとても大切なデータです。

中略

ちなみに、現在、2002年の国際湿地保全連合の「水鳥個体数推計第3版」では3000羽以下とされており、その後の私たちの調査に基づく推計では繁殖番数で400-600番、個体数で1200-1800羽です。

5. 投稿者:H氏 投稿日:05/09/19(Mon) 19:16

ヘラシギの繁殖地はカムチャツカ北端部からチュコト自治区の海岸線、ロシア北東部海岸だけです。上記マイナピルギナの薄緑色フラッグはチュコト自治区の南部で使用し、成鳥・雛を合わせて、2000年以降254羽を放鳥しました。チュコト自治区北部では北極海沿岸のコリューチンスカヤ湾入り口のベリャカ洲を中心として、69羽に薄青色のフラッグを付けました。2004年までの総放鳥数は323羽です。ただ雛・幼鳥は生き延びることが難しくすべてが生存してはいないはずです。
調査を通して分かってきたことは、70年代と比べて、繁殖地での個体数が急激に減っていること(調査地に選んだベリャカ洲では4分の1に減っていました)、繁殖地へのこだわりが非常に大きい種であること、長寿の個体がいること(15年前に放鳥した個体が同じ巣を使って繁殖活動をした例がありました)、繁殖地の減少要因は狐などの天敵以外に見当たらないこと、従って減少の原因は中継地または越冬地にあるらしいこと。などです。ヘラシギにとって、日本は残された大切な中継地であり、これ以上の破壊は種の絶滅を早めることになるということでもあります。その意味で、今回の情報だけでなく日本・韓国などの中継地の生態に関する情報はとても貴重な情報で、フラッグ個体だけでなく、すべての観察データを集めています。保護のための活動について。基本的には、ヘラシギだけを目的としたものではありません。シギ・チドリ類の生息地である干潟その他の湿地の保全が目的です。そこを利用する希少種のヘラシギと、優先種のハマシギを取り上げて、できるだけ多くの方々が実際に見て、かわいいと思い、守らねばいけないことを理解していただく、という一見回りくどい方法です。これまで、具体的にこの調査を直接に使った保護活動としては韓国西海岸中部で進行中の世界最大のセマングム干拓事業などに対し、事業の不当性を訴える一つのデータとして提供しました。またこの情報を通して、日本、韓国、中国などにおける干拓事業のこれ以上の推進に大きな問題があることを、世界の人が理解し始めて来ています。

後略

8. 投稿者:H氏 投稿日:05/09/22(Thu) 02:19

前略

標識を付けることが何の影響もない、ということは考えられませんし、体重の1パーセントでも、それ以下でも、個体に何らかの負担を強いることであることは、私たちも十分意識しています。
ただ、323羽の標識個体に対する5例の観察から、標識個体の生存率が非標識個体に対して大きいという結論は必ずしも出すことはできません。328羽という標識個体数は、成鳥と雛または幼鳥を含めた個体数です。一番いのヘラシギの成鳥は通常4個の卵を温めます。それでも個体数の増えないのは、ご存知のように、幼鳥の生存率が極めて低いからです。そして、いったん成鳥になると、かなり長寿を保ちます。(雛の孵化後、ヘラシギのメスはオスよりも先に南への渡りを始めます。おそらく産卵可能となった個体の数を減らさない、という戦略なのだと思います。)標識個体の成鳥・幼鳥の内訳もおよそ100羽と200羽になっていますので、成鳥500番いのうち50番い、つまりおよそ10パーセントに標識をつけたとするのが妥当だと思います。日本での観察は私が把握した限りで、ここ数年間毎年10羽そこそこで、そのほとんどが幼鳥です。その中で2002,4,5年各1例の国内での標識個体観察は少なくはありませんし、皆さまのようにきちんと見てくださっている方々が日本にたくさん居るからだと考えています。

日本には、観察されたデータを私が知らないもの、観察もされていないものを含めても、30から50羽を越えることはないと思います。渡り経路の中心は、韓国・中国です。干潟が広大で同定も難しかったり、観察者もほとんどいなかったりという問題を抱えています。皆さんの詳細な観察とその情報は、ヘラシギの生息地とそこで立てるべき保護策の結論を早く出すために非常に役に立ちます。
ヘラシギの状況は、かなり急を要しています。あらゆる手段を使って実効的な対策を立てることが必要です。そのための科学的データと、啓発活動とはどうしても欠かすことができない手段だと考えています。マーキングは、単にデータだけでなくそれ以上の啓発活動にも役立っています。保護のための有効な方策を求めていることを理解していただければ幸いです。

2009年9月富山県 幼鳥。とても愛想が悪かった。

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